難聴になると認知症のリスクが高くなる?難聴と認知症の関係
どうして難聴と認知症に関係があるの?
難聴になると、周囲からの情報量が絶対的に減少します。その結果、他人の言っていることがよく聞きとれない、会話がうまく成立しない、という経験を繰り返し、周囲との関わりを避けるようになります。そして、だんだん社会との交流が減少し、精神的健康にも影響を与え、認知機能の低下をもたらすことがあります。
具体的に難聴が認知機能にどんな影響を与える?
認知症は、脳の後天的な障害により生まれる持続的な「知的機能」の低下を指しています。人の知的な能力には、いくつかの種類があります。知識を蓄えることができるかという「知識力」と、外から与えられた情報をすばやく処理する「情報処理のスピード」等が、知的な能力の重要な要素であることが知られています。
国立長寿医療研究センターでは、難聴が60歳以上の方の知的な能力の変化に及ぼす影響について、約12年間のデータを用いて研究しました。その結果、「知識力」と「情報処理のスピード」に、難聴がマイナスの影響を及ぼすことが分かりました。具体的には、年を重ねても維持されやすい「知識力」が、難聴がある場合には低下する傾向がありました。特に「情報処理のスピード」は、一般的に50歳中頃以降に低下を示しますが、難聴がある場合はより急速に低下することが分かりました。
出典:Uchida Y, Nishita Y, Tange C, Sugiura S, Otsuka R, Ueda H, Nakashima T, Ando F, Shimokata H:
The longitudinal impact of hearing impairment on cognition differs according to cognitive domain. Frontiers in Aging Neuroscience, 8, 1-9, 2016.
知的な能力も使わないと衰える
身体の機能は、使わないでいると衰えが進みます。同様に、知的な能力も十分に使わずに過ごすと少しずつ衰えていきます。国立長寿医療研究センターの研究結果から、難聴によって外から入ってくる情報が少なくなることで知的な能力を使う機会が減り、そのため、知的な能力が低下している可能性があると明らかになりました。
聴覚は思考の大事な情報源
耳で言葉を聞いて、脳で考える、言葉で返す、というのが会話をするときの処理プロセスです。つまり聴覚は、思考をするための大事な情報源であり、この聴覚によって、「楽しい」「うれしい」などの情動を引き起こします。難聴がある場合、早めに対策して、聴覚による脳への良い刺激を維持しましょう。